胸部レントゲン(X線)検査とは
レントゲン検査はX線検査とも呼ばれ、身体の内部をX線という電磁波を用いて画像化する検査です。体内の組織は骨や脂肪、水分などそれぞれでX線の通りやすさに違いがあるため、それを利用してX線が各組織を通過した量の違いをモノクロ画像にしています。黒く写るのは空気などのX線が通過しやすい部分で、X線があまり通過しない骨などの部分は白く写ります。
健康診断などで実施する胸部レントゲン検査は、肺や心臓、両肺の間の縦隔(じゅうかく)などの器官に異常がないか調べるためのもので、背部から胸部にX線を照射します。検査は検査着に着替えて行いますが、これは服にボタンや金属がついていると、画像に写ってしまうためです。胸部をはっきりと写すため、撮影時は息を止めていただく必要があります。息を止めることでと肺の動きを止め、画像がボケずにはっきり写りやすくなるのに加えて、息を吸い込むことで肺が膨らみ、肺の構造がはっきり写るようになります。
レントゲン検査は放射線を利用する仕組みなので被ばくが起こりますが、ごく微量です。成人の健康に影響を与えるとされる被ばく量が100mSv以上なのに対して、1回の胸部レントゲン検査で受ける被ばく量は約0.06mSvであるため、極端に何度も行わない限り、レントゲン検査での悪影響はないと考えられます。ただし、胎児は放射線の影響を受ける可能性があるため、妊娠中もしくはその可能性がある場合、必ず医師に伝えるようにしてください。
胸部レントゲン(X線)検査でわかる病気
健康診断における胸部レントゲン検査では、肺炎や肺結核などの肺の炎症や、肺癌をはじめとする呼吸器の病気を発見することを主な目的としています。また、循環器の病気(大動脈の異常や心不全)の発見の役にも立ちます。
当院では呼吸器専門医によるレントゲン読影に加え、AIによる二重読影を行っております。
胸部レントゲン検査で見られる肺の所見
胸膜の癒着、肥厚
肺を包む膜のことを胸膜といい、過去に細菌感染などが原因で炎症を起こしている場合、癒着したり、厚くなったりすることがあり、それを傷跡といいます。古い傷跡であれば問題ありませんが、以前のレントゲン画像と比較して陰影に変化が起こっている場合などでは、CT検査などの精密検査を要することもあります。
結節影
肺は、レントゲン画像では黒っぽく写り、肺癌や肺結核、肺真菌症など何らかの病気がある場合はその部分だけが白っぽく写ります。白っぽく写っていても、古い炎症が治った傷跡や、血管と骨などが重なったというような可能性もあるため、問題となる影があった場合は、精密検査を実施して確認することが多いです。
空洞影
空洞影とは、肺の一部に穴が開き、その穴を厚い壁が囲むドーナツ状の陰影のことです。空洞ができる主な原因としてあげられる2つは、結核などの感染症と肺癌です。感染症であれば、多くの場合は発熱や咳、黄色い痰、といった症状がありますが、自覚症状があまりないこともあります。空洞影がみられた場合、痰を検査して病原菌がいるかどうかや癌細胞の有無を確かめ、さらに胸部CT検査などを実施して肺の病変をより詳細に調べます。
胸部レントゲン(X線)検査で「要精密検査」と指摘された方へ
レントゲン検査は病気の疑いを発見するのに有用な検査です。健康診断や癌検診などで受けたレントゲン検査で「要精密検査」という結果が出た場合、胸部CT検査などより精度の高い画像検査を実施してはっきりした診断を行います。
CT検査の仕組みはレントゲン検査と同様で、こちらもX線を利用して画像化を行いますが、胸部レントゲン検査ではX線の照射が1方向からだけであるのに対して、CT検査では身体の周りから照射します。そのため、胸部レントゲン検査ではどうしても起こる、臓器の重なりなどによる死角がなく、体内を輪切りの断面図として画像化することができます。これにより、より精密な診断ができるようになります。
胸部レントゲン検査で異常があっても、必ずしも重大な病気があるというわけではありませんが、ご自身で判断せずにしっかり精密検査を受けて確認することはとても重要です。当院では、CT検査が必要な場合、近隣の医療機関への紹介を行っています。(CT検査のみ施行していただき、検査結果は当院で説明いたします。そのうえで専門病院へ紹介が必要な際には改めてご紹介させていただきます。)