アスリート喘息・スポーツ喘息
(運動誘発喘息)

運動誘発喘息(アスリート喘息)とは

気道(きどう)とは、呼吸をするときの空気の通り道のことです。気管支喘息とは、この気道になんらかの原因で炎症が起こって狭くなり、空気が通りにくくなる疾患です。気管支喘息のうち、運動が原因で起こる喘息発作を運動誘発喘息といいます。もともと気管支喘息のある方の場合は、その重症度が高くなるのに伴って運動誘発喘息も起こりやすくなり、80%以上の重症喘息患者さんに運動誘発喘息が起こると言われています。


運動誘発喘息の原因

運動をすることで体に必要な酸素の量が増加し、呼吸の回数が増えることが大きな原因です。「ハーハー」と呼吸をすることで、冷えた空気が気道に流れ込み、その刺激や乾燥が喘息症状を引き起こすと考えられています。気温や湿度の低い冬場の方が、夏場に比べて運動誘発喘息が起こりやすいのはそのためです。


運動誘発喘息の症状

次のような症状がある場合、喘息誘発喘息が疑われます。


運動誘発喘息のタイミング

即時型反応

運動を始めてから、終わるまでに起こる。

遅延型反応

運動が終わってから6〜12時間後に起こる
遅延型の場合、運動誘発喘息であることに気付かないケースもあるため注意してください。発作が起きた数時間前に運動をしていないか、見直してみる必要があります。


運動誘発喘息の起こる運動

運動誘発喘息の起こる運動運動誘発喘息は、ランニング、サッカー、テニス、バスケットボールなどの持久力が必要な運動で起こりやすくなります。これは呼吸の回数が増えるためで、特に寒い日のランニングは症状が出やすいため注意してください。また、スケートやスキーも、気温の低い場所で行うため、運動誘発喘息が起こりやすくなります。
一方で、散歩などの軽い運動や、激しい運動であっても水泳は、水中で行うため、運動誘発喘息が起こる可能性は低いとされています。


運動誘発喘息の検査と診断

運動をするたび、咳き込んだり息が切れたりする場合には、運動誘発喘息が疑われます。運動誘発喘息である場合は、運動をしているときにだけ検査で異常があらわれることが多いため、運動負荷試験という、実際にランニングをするなど、運動負荷をかけて行う検査をするなどして診断します。


運動誘発喘息の治療

運動誘発喘息であると診断された場合に必要になる治療や予防法には、次のようなものがあります。

薬物療法

軽度の運動誘発喘息は、運動を中止して数十分程度で自然と症状がおさまりますが、運動誘発喘息が起こるということは普段の喘息のコントロールが良くない可能性が高いです。運動するたびに喘息発作が起きていると、体作りや競技のトレーニングに支障をきたしてしまうことが考えられるため、普段から長期管理薬(吸入ステロイド、長期作用型気管支拡張剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬など)を使用して喘息をコントロールしておくことが大切です。


運動誘発喘息の治療とドーピング

一部の喘息の薬は、ドーピング検査に引っかかってしまうため、ドーピング検査を受けるようなアスリートの方の場合は、それを考慮した上で薬剤を選ぶ必要があります。


運動誘発喘息の予防

運動誘発喘息の一番の予防法は、普段から吸入ステロイドなどの長期管理薬を使用して喘息の症状をコントロールしておくことです。その他に、次のような予防法を運動する際に行うと良いでしょう。

  • 普段からの継続的なトレーニング(運動誘発喘息は急激な激しい運動によって引き起こされやすいため)
  • 運動前の十分なウォーミングアップ
  • 短期作用型の気管支拡張薬の吸入(運動開始の15分程度前)
  • 冬場の運動の際のマスク着用(冷たい空気が気道に直接入らないため)

アスリート喘息外来

学生のスポーツ選手だけでなく、オリンピックレベルのトップアスリートでも5〜7%運動誘発喘息の患者さんが存在し、発症の可能性はどの競技種目であっても有しているといわれています。
アスリートにおける、運動開始後の咳や息切れは選手生命に関わる重要な問題であり、本来のパフォーマンスを発揮するためには、適切な治療は欠かせません。

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