肺結核とは
肺結核は、結核菌が肺や気管支に感染することで起こる感染症です。かつては感染者が多く国民病とも呼ばれ、日本人の死因となる病気のトップでしたが、現在では治療薬が開発されており、完治が見込める病気になっています。結核菌の感染経路は咳やくしゃみなどで、感染しても発病しないことも多く、初期症状は風邪と似ています。そのため、最初の段階では見逃されることもありますが、早期に治療を行うことで重症化を防ぐことができ、また、周りに感染させるリスクも少なくなります。肺結核においては、早期の発見、治療が重要です。
肺結核の原因
結核菌は、肺結核の発病者の咳やくしゃみで出てきた飛沫(ひまつ)を吸い込むことで人から人へと感染します。ただし、結核菌に感染しても必ず肺結核を発病するわけではなく、多くの場合、結核菌は身体の免疫機能によって抑え込まれ、活動をやめ体内に留まります。感染者のうち発病するのは1割から2割程度だといわれており、発病していない状態であれば、結核菌に感染していても周りにうつすことはありません。基本的に感染直後よりも、数か月から1、2年の時間が経ってから発病することの方が多く、感染から数十年が経過してから発病することもあります。これは加齢をはじめとする何らかの理由で免疫機能が低下し、活動をやめて冬眠状態だった結核菌が活動を開始するためです。なお、発病者が使用した食器などを介して感染する心配はありません。
肺結核の症状
肺結核では、咳、痰、発熱、倦怠感、体重の減少、寝汗などが主な症状として見られます。風邪と間違えられることもありますが、それは初期の進行が遅く、症状が軽いためです。2週間以上咳が継続する場合、または痰に血が混じっている場合は肺結核が疑われます。病気が進行し、重症化すると病気が他の臓器にも広がったり、呼吸困難になったりする可能性があります。早い段階での発病の発見や治療の開始は、症状の重篤化や周りの方への感染を防ぐことに繋がりますので、症状がある場合は当院までご相談ください。なお、高齢者は自覚症状に乏しい場合がありますので、注意するようにしてください。
肺結核の検査・診断
肺結核の発病の可能性が考えられる場合、結核菌の病巣が肺に見られるかどうかを調べるためのCT検査や胸部レントゲン検査を行います。また、痰の中に結核菌が含まれるかどうかを調べるため、顕微鏡検査や培養試験を実施します。結核菌への感染の有無を調べるためにはツベルクリン検査や血液検査を行いますが、ツベルクリン検査ではBCG接種を受けたことがあると、結核菌に感染していなくても、感染した時と同じような反応(注射した部分が赤く腫れる)が見られるため、判断が難しくなる場合があります。そのため、最近ではBCG接種の履歴に左右されない、インターフェロンガンマを測定する血液検査を実施することが多くなっています。この血液検査はIGRAと呼ばれています。
肺結核の治療
肺結核に対しては、主に薬物治療を行います。患者さんの状態によって差はありますが、多くの場合、数種類の抗結核薬を6か月の間、毎日服用していただくことになります。検査で痰の中に結核菌が含まれていることがわかった場合、周りの方への感染を防ぐため、結核病棟に入院し、治療を行います。多くは1か月から3か月、平均して2か月程度で退院できます。入院治療は、治療隔離入院勧告によるものであれば国や自治体の医療費補助の対象となります。入院中は、看護師をはじめとした医療従事者の目の前で薬を飲む、直接服薬確認治療(DOTS)という方法がとられます。退院後は通院治療となりますが、薬は飲み続けることになります。途中でやめると結核菌に対しての効き目がなくなってしまうことがあるため、治療が終わるまでは医師の指示に従ってしっかり薬の服用を続けるようにしてください。
肺結核の予防・治療後の注意事項
現在では1歳までに受けることになっているBCGのワクチン接種は、肺結核による重症化を予防する手段として有効であるとされています。ただし、これは結核菌への感染そのものの予防ではなく、結核菌への免疫をつくり、発病後に重篤な状態にならないようにするというものです。結核菌への感染自体の予防は難しいため、感染の拡大や重症化を防ぐため、定期的な健康診断の受診による早期発見が重要となります。